Geschick
Mobius of Rebirth-7
白黒の世界に千の線。降る雨は冷たく、空々しい。鈍重な雲に覆われた空からは、ひとしきりに雨が――――
されど、此度は一人ではなく。信じ合えるパートナーが隣に立っていてくれた。悲しみに押し潰されてしまわぬよう、道を間違えることのないように。しっかりと手を握って、その温かさで教えてくれ、支えてくれている。
傘を持つ手に、重なっている。季節はもう夏だと言うのに、どこか肌寒い七月の日だった。
「相沢さん、こちらが喪主の色です」
式場の前、待ち合わせていた葬儀屋の人間を連れて、施主である藍が来る。親族は少なく、しかし弔問客はいた。神道の関係者がそのほとんどではあった。
祖母である夜神瑠璃が亡くなった。父は来ず、葬儀は全てこちらでやらなければならなかった。夏川憐など、スロウの人間が助けてくれなければ、おそらく迷ってしまっただろう。
「来未、受付を頼むな。ベアトリクスは後で香典の管理とかするから」
葬儀の手順は知っている。それに、藍が詳しかった。彼女が葬儀社を手配してくれ、施主を買って出た。スムーズに通夜までこぎつけられるだろう。
「お孫さんでしたか。そちらは、」
「婚約者のようなものです。家族同然ですのでお気になさらず。少々、家庭が複雑でして、両親は顔くらいは出すかもしれませんが、式自体は我々で」
「そうですか。それほど大きくもないので、大丈夫だと思いますよ。何より、貴方自身もしっかりした方のようですし」
はぁ、と濁しながら返事をする。喪主の挨拶を考えるためか、テンプレートをもらって葬儀社の人は藍と式場の中へ入っていた。あくまで、仏式である。神式にするのはよくわからなかったし、弔問客も神道関係で繋がりがあった人しかいない。
「堂々としていればいいと思います。迫力はありますから」
「葬式に迫力出してどうするんだよ」
「弔問の方々は、貴方を夜神浄階瑠璃の後継者だと思います。そのようなこととは関係なしに、私たちはこういった儀礼や式を得意としていますが」
隣に彼女がいるだけで、安心出来た。遠野夜神浄階色は、その名に恥じない式を執り行うことが出来るだろう。
藍は事務をこなしているようだ。スロウから届く花などを、どこに飾るか考えている。さらに神邪馬や神尾の人間も到着しつつある。さながら、東洋異端勢揃いだ。
いつしか世界に溶け込んで、夜神色は今日も生きている。祖母を見送った後、ようやく戻った日常に、笑顔がきっと、咲き乱れる。欠けた人物など無く、ピースは揃ってハッピーエンドに。
「ここからスタートだな。彩も冬真と会ったみたいだし」
「はい。日常に戻るまず一歩、です」
物語はここから始まる。別れの日には相応しくない、笑顔で始めるのだ。
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