Mirage
Meteor/Reincarnation
上の階に長旅と精神的疲労で心身ともに疲れきった西川彼方とヒース・アルヴェンを寝かせ、夜神の当主と対面する。
現時点での夜神の戦闘能力を把握し、天井との勝敗を予測する。どう計算しても結果が敗北となるのなら、第二案を実行するしかないからだ。
遠野夜神家の能力は「炎焼」と「恐怖」、「後光」の三種類。平紗家の能力は「魅了」と「楽園」、「後光」の三種類。それぞれ、魔眼、結界、身体能力向上の効果を持っている。
長剣を操り、斬打による攻撃で正面から敵を破砕する平紗。
短刀を持ち、隠密からの暗殺で背後から敵を抹殺する夜神。
「どう考えても天井に立ち向かえる道理は無いな。矢上、夜神に伝わる特別な武装などは無いのか?」
平紗の家宝は夜神が折った。その短刀は君塚冬真が預かっている。
「童子切安綱、短刀、天空の破片の三つが」
「日本刀か。さすがに夜神、鬼切りの太刀まであるとはな。その短刀と天空の破片とは?」
「童子切の脇差みたいなモノ。無銘だけど、鬼ばっかり斬ってきた短刀だから、妖刀とかそういう類になると思う。後は瑠璃で出来た宝珠。三日月宗近の目釘穴に使われた小さい宝石なんだけど、未知数の部分が多いブラック・ボックス。あの子は隕石なんか降らせた」
ラピスラズリは星の欠片とも呼ばれている。重力に関する何らかの干渉、が定義だったはずだが、
「天使」である彼女が使えば星を降らせたということになる。
どうにも、解せない。
本来、夜神色という一人の人間は男でも女でもない中性的な存在で、死だけを望む、空の使い。口惜しいが、冬真の説を採用するなら、ジェームズ・ラブロックのガイア説を取り入れなければならない。いや、すでにガイア理論と言うべきか。
この地球が生命だとするならば、防衛本能を持つことは不思議ではない。
「まさか。それじゃ、あの子は『星自身』とでも?」
「そうだよ、矢上藍。彼女はこの星の命そのものさ。無論、夜神色が死ねば地球が死ぬというわけではない。しかし、死期は早まる。生命として星に根付く全てが星の一部ではあるが、彼女は特別だ。地球の大気から地殻、命を形成する巨大な生命圏は気温から大気ガスの濃度までをも自己調節する。それは誰にも真似の出来ないことだ。真似をしたとするなら、それはすでに地球という生命を度外視した冒涜に過ぎないだろう。故に均衡は崩れる。理論上、生命は環境に適応した姿に進化するとされるが、逆だな。環境は生命によって適応させられる。均衡を失った生命圏がどうなるか。自(オノ)ずと知れたことさ。星の命が尽きるだけだ。夜神色は、そんな不器用な彼女(ガイア)の意思となって星を護(マモ)る、防衛機能のようなものだろう」
「どこにそんな証拠があるんですか?」
「レントゲン写真だ。普通、人間だけに留まらず、広く生命という定義に当てはまる項目として、有機物という言葉がある。これは炭素から生まれたということだな。レントゲン写真はX線を照射し、遮断した部位と通過させた部位とで人体の構造を視覚的に感知するものだ。が、夜神色は全ての電磁波を遮断していた。つまり、ヤツは鉄で出来ているということになる。正確には炭化珪素と言い、炭素と珪素の化合物だ。地球を構成している大部分は炭素ではなく、珪素だ。耐熱性、硬度に優れ、何より絶縁破壊電界が高い。電気を容易く通し、しかも壊れないということだ。この炭化珪素は比率が一対一と安定しており、鉱物学上『地球には存在しない』鉱物なんだ。隕石に僅かに含まれるだけでな、星の欠片、魂とでも言うべきか。ふん、つまり夜神色は、星そのものであると仮定できる」
自分で言ってて馬鹿馬鹿しいと思う。思うが、事実だった。
知ったのはつい最近だ。前々から平紗歩叶の肉体はおかしいと思いつつ、ポルディーニとの戦闘で外された関節のレントゲン写真で理解した。
「さて、話を戻そうか。天井神由はそれは強い男だ。平紗歩叶だろうと朝里煌貴だろうと容易く蹴散らす。まして、君塚冬真が相手では勝敗は知れてる。彼の能力は破壊と防御。あらゆるモノを打ち砕き、あらゆる攻撃を遮断する。対する夜神色は、今まで能力を抑えてきた。何故か。答えは簡単だ。彼女がいた場所は、ずっと異界だった。陰陽なら陰にいたせいで、朝里煌貴の舞台だ。その平紗歩叶が元の世界に戻ったとしても、勝てないだろうな。陽と陽がぶつかっても答えは変わらない。陽を倒せるのは陰のみ。しかし、夜神はすでに死して、なおかつ分も悪いアウェイ・ゲームだ。夜神色が天井神由に勝つには、夜神の力を持つ平紗歩叶にならなければならない」
平紗と夜神。身体的な能力を比べるのであれば、夜神、朝里煌貴の方が優れている。
夜神色の肉体は平紗歩叶がベースであろう。意識に夜神煌貴が介在しているだけに過ぎない。炭化珪素が織り成すハイロゥを持ってして、ようやく天井に並べるかどうか。
ハイロゥは肉体の補強に過ぎず、武器を高質化させるものではない。故に平紗歩叶は朝里煌貴に武器を破壊されることとなる。その点において、童子切安綱なら少しは持ちこたえる。
直接的な攻撃方法となれば、天井に軍配が上がる。魂の所在を突き止めても、天井には盾があった。接近戦なら、武器もろとも彩を殺せるだろう。
天井はランクにすればA++ともなる能力の持ち主だ。六王を超えるほどの逸材。ランクA+の彩に倒せるか。EXに届く防御を誇る天井を打ち破る方法は有り得ない。
「聖戦、か。女神(アテナ)の守護を打ち破るには異界(トラキア)では無理かもしれんぞ、彩」
「妖姫(モルガン・ル・フェイ)、出て来い」
魔眼に住み着く魔女を召喚し、具現させる。見目麗しい姿はどこか妖艶。八割方は回復した肉体の盾に、己が従属者を呼び出した。
君塚冬真の体を投げ捨て、悠然と歩み寄る天井神由は、その最たる能力、守護の力を前面に出していた。
アイギスの神楯。女神アテナの加護を受けた右腕は、ほぼ全身を覆う障壁に近い。鏡のように、全ての攻撃を遮断し、なおかつ弾き返すカウンター反撃用の防具。ギリシア神話の三大女神を前にして、矢上彩は微動だにしない。
「モルガン、ミネルヴァを抑えれる?」
「どうでしょう。神そのものと対峙した経験はありませんわ」
タッグにしても、格が落ちる。所有者の格が違えば、その使い魔のレヴェルが落ちるのも当然だろう。神と魔女では、どうにも勝負にならない。まして、モルガンは男性に強い魔女で、純潔の象徴のような女神には滅法弱い。
戦いと芸術の女神、アテナ。別名をミネルヴァ。英雄の庇護者として数々の聖戦を勝利に導いたギリシア最高の女神。
その女神に、無謀にもモルガンは突っ込んでいった。
火と魅了の魔法を得意とする魔女。天井は、何の躊躇いもなくミネルヴァをモルガンに当て、自身は彩へと一目散に駆け始める。
当たれば全てを砕く一撃。冬真を昏倒させたあの一撃。この身に喰らえば命は無いと知れ。
源頼光が酒呑童子を斬殺した剣。三日月三条宗近とほぼ同等の寸法。しかし、華麗さより無骨に武を追求した刀はただ一点、殺戮に関しては他の追随を許さない。
名刀を鞘に納めたまま、白いドレスの姫はその魔眼で敵を見入る。
――――攻防は刹那。互いに馳せ違う一瞬の果てに、必殺の意志を遺して。
攻撃を全て無効化、どころか反撃してしまう楯。
本体である天井から引き剥がすのが自分の役目である。本体を倒せば、楯だけなどに存在価値は無い。
しかし、敵は戦女神。槍を片手に、意気揚々と微笑む彼女は確かに美しく、見事だった。
「ブリタニアの貴族、でしょうか。美しくはあるがどこか歪ですね」
「さすがに神々の住む山岳宮殿(オリュンペイオン)の女神。清らかな顔をして、戦に赴く戦士とは思えませんわね」
魔女と女神。存在は鏡のように正反対で、どこか似て、しかし非なる。
視線の意味もまた非対称的であろう。涼やかに憎悪を受け流す女神には、何の敵意も感じられない。
一際高い剣戟の音。鋼を散らす火花が音として耳を貫いた。
思考を戻す。彼女の主は、最強の敵と対峙しているのだ。極めて低い勝算を得るため、自分はここで女神を相手に愚痴っているだけか。
あのせせら笑う騎士を殺すことしか頭に無い。その感情。唯一の感情的行動を支えよ。
御身に降りかかる炎を振りほどきながら、前に出る。あの鏡のような防御。全ての行動を流し、そして返す鏡の楯を止めることが自分の使命。
女神は攻撃を知らぬ。故に、全ての行動が受けに回る。それが最も厄介と言えば厄介だった。
幻像の肉を焼く火。自身の能力が高ければ、反動も強い。確かに肉を焦がす感触を味わいながら、それでもモルガンは前に出る。
「――――来い」
右手に精神を集中させる。まだ、距離は遠い。悠然と待ち構える女神に一矢を報いるには、まだ遠い。
自身の火は己さえ焦がしてしまう。灼熱を超えて、紅蓮を踏み、それでも、この右手は届く。
「無駄でしょう。鏡に近付けば、その分、貴女は」
燃ゆる炎の影。揺らめく女神を一点に定め、一歩、踏み出す。
紅蓮は幻であろうと、この世への存在を許さず。無慈悲な熱を持って妖姫を消滅させんと猛る。
――――思えば。その一途さこそ、「妖姫」と徒名(アダナ)された所以かもしれぬと。
英雄と妖姫を別ったものは唯一つ。運命という名の神の益体(ヤクタイ)も無い分別だけだろう。
憎むべき、血。穢れた御身。
――――神よ――――
何故、私を、異父と産んだ。
何故、彼の者を略奪者の子と成したのだ。
答えよ、オリュンポスの神よ。
知りたいのは、ただ真実一つ。暗い熱情の果てに、我が身が受けた仕打の答えを知ろうと、右手を伸ばす。
「答えは彼岸(ソコ)にある。知っている、その場(ナ)は、林檎(リュウゴウ)の島。無数に穿(ウガ)たれた湖。桃源の地を、今こそ、呼び出そう」
右手で、掴む。兄が待つ、あの場所を。
触れれば、鏡も何も関係が無い。このまま、神さえ破壊してしまえばいい。
「鏡に、映らない」
戸惑う声。当然だ。此岸に存在する鏡が彼岸を映せるものか。
理想郷(アヴァロン)。永遠を手にした常若の世界(ティル・ナ・ノーグ)。彼岸とでも黄泉とでも呼べばいい。
その渡し舟に乗ろう。全てを知り、全てを捨てたあの場所に。
驚愕する女神を前に、モルガンは視線を背けた。見なければ、いい。最後の手段さえ消して、最後の希望に焦げた左手を伸ばそう。
視線の先。
死の直前に立つ最強の境界者を見る。
「後は頼もう、ディバイダー――――」
胸を押さえて倒れていた男性を操る。魅了。意識を失っている方が、効果的だ。
断ち切れ、主との繋がりを。
別て、いつかの私たちのように。その手のナイフで。
絶対を持って必定の運命を与えてやれ――――
温かな大気に包まれていた。
背を支える何かがいる。僕は、ゆっくり、ゆっくりと、視界を甦らせる。
「あれ」
胸の痛みは無い。どころか、身体に受けた無数の傷はほとんどが癒えかけている。
「女神の守護ですわ。君塚冬真、貴方は未だ死してはおりませぬ」
いつか聞いた、刺々しい言葉ではない。妖姫、モルガンの声。となると、自分はモルガンに支えられているらしい。
「私たちの責務は果たしたでしょう。後は、主の帰還を待つだけ」
「ああ――――そうだね」
小さく頷き、視線を上げる。
其処にあるのは、世界の終焉だ。
「は」
笑いや驚きを通り越して、呆れた。
聖堂は散々に破壊されていた。木製のベンチ、ステンドグラス、聖壇。とにかく、マトモに存在しているものは無い。
ただ、破壊の中心。暴風の只中にいる二人のうち、一人だけが無傷だった。
断末魔のような声が聞こえる。それが、矢上彩の声だと気付くのに、どれほどの時を要しただろう。絶叫のような裂帛した気勢。心地よい音楽のようなのか、死力を振り絞る彩に笑いで返す黒い騎士。
口腔から血液を逆流させ、頭蓋から鮮血を垂れ流し、体中から血潮を噴出す血達磨(チダルマ)の死神。
血煙の中、なおも争う二人の騎士。
その動きはまるで見えない。衝突する度、光が舞う。そして、血煙が起きる。
全ての攻防で、矢上彩は敗北していた。足りぬ力量、届かぬ技量。補うのは血気で出来た気勢のみ。
彩が刀を振るう度、その体が爆ぜる。悲鳴に似た絶叫を上げながら床を転がり、それでも、まだ、戦いは続く。
もう止めればいい。全て諦めてしまって、苦痛から解放されれば――――
それほどまで。彼女は傷ついていた。
「自尊心、誇り、純愛の契り、殺意。このどれが欠けても、夜神色は敗北するでしょう。では、何故、夜神色はこれらを失わないか。あそこまで襤褸になりながら、なおも立ち上がる、その根底の理由は?」
「そんなの、わからないよ」
「『怒り』ですわ。夜神煌貴は憤慨しています。無常理に日常を奪われた行き場の無い激情。彼は、ただ揺蕩(タユタ)っていたかった。日常という枷(カセ)に填(ハ)められたまま、不透明な未来に向かいたかった。それが、奪われた。何も見えない未来を与えられ、肉体を殺され、幽鬼(ゴースト)となった」
ゴースト。
今の煌貴を示す言葉に相応しい一言で、冬真は合点がいった。
朝里煌貴は幽鬼だ。平紗歩叶、愛する女性と共に歩む幽鬼となり、夜神色という共存者を生み出す。
それは、朝里煌貴じゃない。いくら夜神色が煌貴のように振舞っても、平紗歩叶との命であることに変わりはなく、すでに、幽霊のごとく生前を「模写」しているだけ。
立つ理由など、それだけで充分。
朝里煌貴は諦めない。その怒り、夜神色が傷つく度、世界を震わす激情と変わるだろう。
「だって、煌貴は、いつだって自分のモノに触れられるのを嫌がってたから」
理由は単純。
世界を奪われた。自分を消された。そして、歩叶を奪われるなら。
キレるのも当然ってものだろう。
怒らせた後が怖いので、冬真は星の欠片と短刀を空に返し、仰いだ。
激震が大地を揺らがす。激情は星命に達し、一つに交わる――――
「地震、だと」
赤い敵を前にし、天井神由は停止する。せざるを得ない。地面は揺れ、床は軋み、立っていることさえままならない激震になる。
夜神色は、頭を垂れて立ち尽くしている。まるで、敵が大地を揺るがしているかのように、微動だにしていない。
赤い影が、片膝をついた。床を見下ろし、表情さえ掴めないまま、血に濡れた右腕を振り下ろす。
「・・・ッ」
最大の振動が聖堂を襲う。石造りの構造を破壊し、ぐわん、と床が傾いだ。
止んだ激震に体勢を立て直し、天井は一足で夜神色に寄った。
一刻の猶予さえ許さない。この敵は、今すぐ、即座に、殺すべきだ――――
麗しい顔を、血で染まる体を、その生命を両断して、勢い余る剣は床を貫く。
鮮血が最大の噴出を見せて、両断された死体が床に崩れた。
「終わった、か」
君塚冬真の叫びが聞こえる。そうだ。客観的に見ても、敵は消滅し、死した。
安堵が一瞬だけ天井の心に取り付き、離れた。まだやるべきことは残っている。アイギスを取り戻し、君塚冬真を殺す作業が残っている。
びり、びり、と。不可思議な音が聞こえる。おそらく、建物が崩れる前兆だろう。
今すぐ敵を殲滅し、脱出しなければ自分も危うい。平紗歩叶と共倒れ、ならそれも面白いかとも思うが、命を捨てる場所でないことも知っている。
残る騎士は、自分一人。世界を守る大義を持つのならば、無駄に死ぬことは許されぬ。
「いや、俺一人で充分だ。二人も守護者はいらねえだろ、天井」
前に。
上裸の男が立っている。血で染まる赤い布を腰に巻きつけ、パレオのように着こなした男が。
解せないのは、君塚冬真ではないことだ。右手に日本刀を持ち、左手を軽く振る男はしなやかな筋肉と赤い目を持っていた。
「よっ、俺のコト忘れたか」
年来の友のように、親しげに声をかけてくる男に、見覚えはある。
「夜神、煌貴」
是、と頷く夜神煌貴がいる。口元を歪ませたまま、俯くその姿に、天井は恐怖を感じずにはいられなかった。
「待ってたぜ、オマエが来るのを。その顔を切り刻んで、手足をもぎ取って、ハラワタぶちまけて、ヒィヒィ喘がせるこの瞬間を。オマエを殺す。それも、特上の苦痛を持ってな。俺の世界でも一目で分かるようにしてやる。幾ら転生しようと判別出来るようにしてやる。歩叶を傷つけて、俺を殺して、居場所を奪いやがったオマエ。アァ、楽しいなァ。その澄み切った顔を■■■にしてダルマみてぇに■■■■■にしてやる。オマエはどーせ正義の味方だろうけどな、そんなの関係あるか。世界が俺を殺すなら、俺が世界を■■■やる。知ったことか。久々の体なんだ。せいぜい、楽しませてくれよ。この―――――ゲームを」
声が聞こえない。否、聞いてはならない。
怨嗟が詰まった呪詛。脳を破壊するような言霊に、天井は、思わず耳を塞いでいた。
言葉で人を殺せるなら、今の言霊こそ、死だ。
死を振り払うように、天井は進む。剣を両手に握り、我武者羅(ガムシャラ)に、しかしそれだけ意志の詰まった攻撃。
黒い髪。赤い瞳。釣り上がった口元。悪魔のような容姿だが――――翼が見えた。
真白な羽根を背に生やし、左腕で右肩を抱いたかと思うと、悪魔な天使は、一瞬にして遥かな空へと上昇していく。
「冬真、ナイス」
空中に浮遊する二つの所有物を回収し、煌貴は反転し、静止した。
右に刀、左に短刀。歪な二刀流を持って、一気に空で加速した。
極光の風。聖堂の空を切り裂く一条の光。天井の左手を飛ばし、通過して反転した。
「凄いよっ。煌貴、戦闘機みたいだ」
そう、天井が鉄壁の暴風なら煌貴は極光の一閃。刃のように研ぎ澄まされた光を引きつれ、空を支配する。
ここに来て、勝負は逆転する。天井神由は恐怖も相成り、無意識で鈍る肉体を駆り立てて、それでも煌貴に対抗しようと気を高める。
煌貴は、一際高く、空へ舞った。
見える。夜神と平紗の魂。赤い光の中、白く輝く二対四枚、白亜の翼。
重力に引かれ、加速しながら落ちていく。
地面。床。角度を変え、地平とは平行に、さらに加速を続けて、光そのものになった煌貴が天井に迫る。
――――煌く貴い光。全ての願いを叶える歩みとなりて、形を手にして剣となる。
天井神由を貫く。
首、胴体、足と三割された死体が光の波に飲まれ、宙に放り投げられる。
そうだ。煌貴は、剣。夜神色は敵を滅する剣だから、冬真は剣にならずとも。
「返すよ、冬真。俺が持ってたら壊しちまう」
星の船を投げる。冬真は軽く受け取り、頷いた。
帰るために、船に乗ろう。空に穿たれた、門を通って。
僕らはそれぞれがバラバラで、チームワークなんて知らない組織。
それでも、個が個を寄せて、集となって、一種の連携を生む。
君が言ったこと。
異世界に勝つため、僕らは、世界を知って、力とした。
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