Mirage

M i r r o R a g E

その手を除けろ。


己が示威(シイ)の表れか、儀式的な祭壇に私は置かれている。
両腕を拘束されたまま、意識を失ったまま首を垂れている。
侍女が三日前に止まった頭部の裂傷からの血を拭き取る。額から鼻、そして口元を拭っていく。
繋ぎ合わされた両腕の手首。鎖が天井高くまで伸びている。
倒れることすら許されず、力を失った肉体は、ただ鎖によってのみ地面に伏せてはいない。
腰を折り、前のめりの姿はまるで、神に許しを乞う魔女のよう。
姿だけがそれを否定していた。豪奢に彩られた白のドレスは少女に似つかわしいものだ。
だから、少女は聖女。神聖かつ高貴な、触れることの許されない至高の存在。
光が注ぐ。天からの射光は薄く、私だけを照らす。

「まるで神像、だ。触れるのも勿体無い」

ギャラリーが口を開く。
時には一日中、飽きることもせずこちらを眺めている男。
黒い騎士が愛しげに手を伸ばす。しかし、その手は姿をなぞる様に、虚空に翳すだけだった。
煌貴(オレ)も歩叶(ワタシ)も、今すぐ殺したくて堪(タマ)らない。
まして彩なら、殺意は生命が持ち得るレヴェルを遥かに凌駕している。


その手を除けろ。


気が触れそうなほどに殺したい。
意識は無い。しかし、魂はある。だから識(シ)れる。痴(シ)れたようになっても、知れる。
この眼が映す世界。色鮮やかな魂が視えるのは何故か。
思えば、ずっと不思議だった。
原色の魔眼は三種。赤はバイロキネシスの火。黄は誘惑の色。なら、何故青など作ったのだ。
魂が視える蒼い瞳。即ち、死を知る眼。

少女が本当に天使なら、世界はその鏡(メ)に何を宿す。
少年が本当に天使なら、世界はその魂(テ)に何を宿す。

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