Mirage
ignis fatuus-6
八月ももう終わる。浅川医院ご一行様は、診療所の内装整備によって再び休暇になった。
今度は柚葉も一緒である。診療所自体が閉まっているのなら、柚葉が残る必要も無いのだ。
やはり宿はウミネコ館。初めて来る二人のうちの一人にそっくりに鳴く動物なので、ぴったりだ。
風通しの良い部屋で、麦茶を片手に主役を待った。柚葉はビーチ・パラソルを持ってすでに準備万端だった。
「賑やかになった、うん。けど、何でここだけ静かなの?」
自分の分の麦茶を注いできた夏海に質問をする。彼女は笑って、爽やかに答える。
「渚お姉ちゃんがまつり実行委員になって、色々やっちゃってるんです。花火を買ってきたりとか、あたしもお手伝いしましたよ。八月の最後まで、ここは賑やかになるんですよ。けれど、今日だけは特別、貸切です」
白いTシャツが夏に眩しい。対照的に、夏でも黒い長袖な院長はどうしても腑に落ちない。
「私も今日だけは休みです。どうぞ皆さん、楽しんでいってください」
エプロン姿の渚が現れ、さらに賑やかになる。プライベート・ビーチには海の家も見えて、僕らだけにアイスコーヒーを売るジャックさんがいた。相変わらず、手厳しく渡辺さんたちに接しているようだ。
「お兄ちゃん、準備でけたよぉ。ささ、主賓の登場です」
氷彩が奥の部屋から現れて、隣に座る。すっかり水着姿も定着し、はしゃぐ気持ちも満々だ。
「じゃっじゃーん。嬉し恥ずかし、アヤちゃんの本邦初公開、水着姿でっす」
下手くそなナレーションと共に登場するのは、無表情でしかし水着姿な矢上彩。
――――悩殺。いや、マジ、ホントにヤラれたっすよ。
脳味噌がどんな夏の暑さより熱い。水着など無いと断言する彩のために、キリアが貸した新品の水着は小さくて、ビキニみたいに悩殺的。
「ヤだ。お兄ちゃん、顔真っ赤」
「・・・冬真、一緒に行こ」
手を強引に引かれ、外に飛び出る。さすが、煌貴。男の弱みを知り尽くしている。
くそ、これじゃ最強じゃないか。もうこっちは茹蛸(ユデダコ)みたいに逆上せてるんだから。
まぁ、それでも。
周りに誰もいないんだから、茹蛸みたいでも恥ずかしくない。
煌貴がくれた、サービス良すぎのプレゼントは夏の最後を熱く彩っていく。
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