Mirage

Equilibrium-5

「勘違いだよ、お前たち皆。俺にはわかる。根源などありはしない。そんなものは信じたお前の脳にしか無い。ふ、柚葉の狙いがわかるか。あの女は最初から知っていたさ、根源など無いとな。いや、確かにあるだろう。だが、それはお前の望むものじゃない。アカシックレコード?星の記憶?は、まさかガブリエル、レムリアが眠るとでも言うつもりか?長く生きすぎたよ、オマエ。最初の願いはなんだった?ミッシング・リンクを求めるその理由だよ。根源など必要ない。ただお前は知りたかった。異端は何故生まれたか、リリスはなぜ?ありもしない答えを求めて彷徨うだろう。絶望したお前が縋(スガ)ったのは、ありもしないアカシックレコードの存在。星が全てを記憶している?ああ、確かにそうかもしれない。アカシックレコードもあるのかもしれない。ただな、ガブリエル。お前の望む形ではないだろう。お前の中における星の記憶の概念はな、ははは、19世紀の与太話だ!神智学、神秘主義の下らない作り話だよ。笑えるな、笑い話だよ、ガブリエル。そこまで絶望していたのか。かつては崇高な意志を持っていたのかもしれない。だがそれも千年。やがて、腐る」

吸血鬼の王は、何を思っただろう。夜神色の声は、それこそ絶望と共に思考を漂白していく。
白い意識。最後に残ったのは、生への執着だろう。
駆け抜ける銀の風。すでに、眼前。反撃の暇さえ許さずに、夜神色は接近し、肉薄する。
数は幾多。振り上げる腕が分裂する。闇雲に、反撃をしてみようとガブリエルは思う。
恐怖が誘う最高の一撃。闇雲で、鋭い、吸血鬼の反撃。

「オマエの時代は終わっている。未来にオマエの居場所は無い――――!」

突風が、吹き抜けた。
いつか、悠久の彼方に、あの人の娘は言った。我々は夜に支配される者なのだと。
おそらく、逆らったのは自然の摂理。神に抗う精神。それで理解した。
ああ、勝てる道理など無い。消え逝く意識で、月を見上げた。

片目を押さえ、光る隻眼でこちらを射抜く姿。
それはまるで、夜に浮かぶ満月によく似ていた。
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