Geschick

Divine Knight/Night-6

「平和はタイセツなモノなんだって、知ってた?」

テラスで揺り椅子に座りながら、元気に近付いてくる少女を見守る。平和は大切だと自慢してくる少女の言葉。それに笑顔で返し、首を横に振った。
「平和じゃないと、ヒトは死んじゃうから。だから、タイセツ」
子供の言葉に間違いなど無い。そうだね、と頷いて少女を抱きかかえた。嬉しそうにはしゃぐ子供。いつものように、力を見せてとせがんで来る。
自分の力は、ヒトを悲しませるものに違いない。しかし、喜ばせることも出来るはず。思い切って、少女の髪を手に取った。
流れる細い髪を束ね、切断していく。あらゆるモノを斬る指は、少女の髪を削ぎ落としていく。
「ありゃ、寝たのか」
寝息が聞こえる。心地よさに身を任せて眠ってしまったのだろう。動かないうちに、作業を終わらせてしまおう。
許されるのならば。この娘が目覚めた時に、喜んでもらえますようにとひとつ、祈ってから。

母親が迎えに来る。アレットは起き出し、ぴょこんと跳ねてアヴィヨンへと走り出す。
「あら、ありがとう夜神さん。髪、切ってくださったんですね」
優雅に微笑んで、礼を言ってくる。言われて気がついたのか、アレットは自分の髪を触り、室内へと走っていく。鏡を見て、感想を言うためだろう。
「お安い御用、ってヤツかな」
「お上手ですねぇ。いっそ美容室を開業するとか、どうでしょう?」
他愛もない世間話。そんな冗談もありかな、と夢想しつつ、少女の帰還を待ってみる。初めてのお客さんから、初めての感想を。
やがて、少女が元気に走って帰ってくる。不安と期待の一瞬。他愛もないことだとしても。そういう無駄を積み重ねて生きていければ、きっと幸せなのだと思える。
発せられる言葉は、予想とは違っていた。

「うん、アタシも大きくなったら、お兄ちゃんみたいな英雄になるんだ――――」
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