Mirage
Angelic-8
「アイツの命は、白っぽかった」
煙突から昇る煙を見ながら、矢上彩はそんなことを言った。
たった三人だけの葬儀。君塚冬真は、ただでさえ少ない預金で望月崇行の葬儀を行った。
火葬場の煙突からの煙は、まだ出続けている。
「青はお父さんだったよね。なら、天国じゃ父子は一緒だ」
青空に溶けるように、煙は昇っては消えていった。
「そうだ。崇行くんね、彩のことを天使って言ってたよ」
すでに背を向け、冬真の車に向かおうとする彩に向かって彼の言葉を投げてみた。
望月崇行が父親に殺害されても、ニュースにはならなかった。ひっそりと、社会は見逃していた父子を送り返す。
彩もそうだが、氷彩も崇行とは同じクラスだった。話はするが、誰も葬儀には来ていないという状況だったそうだ。
「天使か悪魔か、どっちなんだろうね、彩」
矢上彩は一瞬だけ立ち止まって、背を向けたまま何かを投げてきた。
陽光を反射した鉄の塊は、朝里煌貴の所有していたナイフ。最後に、手を伸ばした望月崇行の希望。
「天使にナイフなど、渡さないでしょう?」
僕は一度、そうだね、と相槌を打ってから、口には出さずに思い、笑った。
だって、彩。キミがナイフを離したら、天使になるのに。
火葬場からの煙は、もう止まっていた。
君塚冬真は悪魔のナイフをポケットに突っ込んでから、彼女の背をようやく追い始めた。
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